マウスの性周期は4日から5日間を1周期として4つのphaseをとるので、膣を200μlのPBSで洗浄し検体とした。膣スメアーによって性周期を決定し、遠心によって上清を分離してウイルス量とケモカインを定量した。マウスはestrus(発情期)とmetestrus(発情後期)の頻度と期間を長くするためにエストロゲン10μg(ヒトに通常使用する3倍量)を皮下に投与し、実験に用いた。洗浄液中のウイルスをX-C plaque法を用いて定量したところ、estrus期やdiestrus期では少量の感染性ウイルスしか検出できなかったのに対し、metestrus期は著明に高い感染性ウイルス量(estrus期の10倍以上)を認めた。膣内に存在するウイルスは偶然に膣に存在するのではなく、metestrus期に膣に高濃度に存在することを明らかにした。metestrus期においては、角化した細胞と共に、多数の好中球やマクロファージなどの浸潤を認められたので、これらの細胞を遊走させるケモカインの存在が疑われた。いくつかのプライマーを用いてRT-PCRを行い、MIP-1αの発現が強いことを発見した。そこで、膣洗浄液中のMIP-1αをELISA法で測定した結果、metestrus期において、estrus期を含む他のphaseより著明に高い値(200pg/ml)を示した。興味深いことに、MAIDSに感染したマウスの方が非感染マウスより高い傾向を示した。 以上から、性周期によって膣の感染性ウイルス量が変動すること、特にmetestrus期においては膣内に多くの感染性ウイルスが存在していることが明らかとなった。その機序として、MIP-1αが膣内に高濃度に存在するため、感染したマクロファージが遊走してくるためと考えられた。よって、異性間感染において、Metestrus期を長くする薬剤は感染を拡げる可能性が危惧される。
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