研究課題/領域番号 |
11671670
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
新美 成二 東京大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (00010273)
|
研究分担者 |
牧山 清 日本大学, 医学部, 講師 (00139172)
熊田 政信 東京大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (70323607)
桐谷 滋 神戸海星女子学院大学, 文学部, 教授 (90010032)
|
キーワード | 病的音声 / 声帯振動 / 超高速度デジタル撮影法 / 反回神経麻痺 / 二重声 / 喉頭全摘術 / 喉頭部分切除 / 声質 |
研究概要 |
声の質と声帯振動の関連については従来、正常者の定常発声について研究されてきた。従来の声帯振動の観察手段は、発声者の声帯振動がある程度周期的であることを前提とした方法であるからである。我々が対象とした病的音声は周期性が乱れている場合が多く従来の正常音声を対象とした方法は使用できないことが多い。今回の研究では、方法論を確立することが第一の目的であった。超高速度デジタル撮影法を声帯に応用することで、不規則な振動の観察が可能となった。それらの知見は、国内外の学会で発表した。さらに構音との関連を見るために、ファイバースコープによる観察も行った。イメージインテンシファイアーを用いて可能となり、閉鎖子音に際する声帯振動の停止と再開の様子が観察された。音声学に貢献する知見であると考える。 特殊な音声として、聴覚的には二つのピッチが聴き取られる二重声音声についての生成機構を観測した。左右の声帯が非同期的に振動していることが認められた。これは、反回神経麻痺による音声障害で最後まで残る不愉快な症状であり、治療が困難な症状である。今回の研究で左右声帯の振動体としての物性の違いがこの異常な発声に関与していることが明らかになった。病的な状態として、見逃すことが出来ないものは、悪性腫瘍術後である。音声の再獲得のために様々な工夫がなされている。今回は喉頭全摘術術後と、喉頭部分切除例について検討した。喉頭全摘例においてもある程度、調節機構が機能していることが示唆された。部分切除例では、音源の確定のために我々のシステムが利用可能であった。残存声帯が音源にならず、喉頭蓋喉頭面と、披裂部の粘膜が接近し音源として機能していることが明らかになった。従って音声改善のためには声帯を修復するより、声帯上部構造を新たに音源として用いることのほうが、より効果的であることが示唆された。これは数例の喉頭外傷例でも童謡であった。
|