研究概要 |
咽頭・食道領域における迷走神経および交感神経の分布状態の調査・整理は,機能温存術式開発のために,重要となる。本研究では,周囲の構造との関係に留意しながら,自律神経系のネットワーク解析を試みている。平成11年度は,迷走神経本幹からの枝ならびに反回神経の食道枝,気管枝の分枝様式ならびに分布範囲を精査し,これらの枝の走行とリンパ管・リンパ節との関係についても解析した。その結果,食道枝と気管枝とはしばしば共通幹をなして起始している。この共通幹は食道と気管との間を走り,それぞれ分布域の直前で分かれていることがわかった。また,食道上部において食道枝は,左側では主として食道の前面から、右側では主として食道の右縁から進入していた。左右からの気管枝・食道枝共通幹間にはしばしば交通がみられたが,実体顕微鏡下の観察において,食道壁内での吻合は認められなかった。気管枝は主として気管の膜性壁に後面から分布しており,壁内での交通が頻繁に認められた。気管分岐部付近では,気管枝ならびに気管支枝を介して,右迷走神経本幹と左反回神経との交通が認められ,これらの交通枝に沿ってリンパ管が走っているのも確認され,悪性腫瘍の対側への転移経路となりうることが示唆された。 これまで明らかにしてきた迷走神経の咽頭・食道領域における分布状態と,動・静脈,リンパ管・リンパ節などの周囲構造物との関係について,領域を上下に拡大するとともに,舌咽神経分布領域との境界領域についても解析を試みている。
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