研究課題/領域番号 |
11671681
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
夜陣 絋治 広島大学, 医学部, 教授 (10136062)
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研究分担者 |
竹野 幸夫 広島大学, 医学部, 助手 (50243556)
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キーワード | 鼻アレルギー / 鼻・副鼻腔粘膜上皮 / 培養線毛細胞 / 一酸化窒素 / 誘導型一酸化窒素合成酵素 / 内皮型一酸化窒素合成酵素 |
研究概要 |
一酸化窒素(NO)は近年、新しい多機能分子として非常な注目を集めている。しかしながら鼻科領域におけるNOの作用の研究は、現在までに現象論が報告されているにすぎない。今回、我々は、NOがく鼻アレルギーと副鼻腔炎において、その病態生理にどのように関わっているかを検討した。特に本年度は、1)鼻アレルギー患者における各種NO合成酵素(NOS)アイソフォームの発現の検討、2)NO蛍光測定試薬(DAF-2DA)による生細胞におけるNO産生の可視化・定量化、3)炎症性サイトカイン刺激によるNOS遺伝子の誘導、4)腺毛上皮細胞におけるNOを介した粘液線毛輸送機能の調節、について研究をすすめ以下の成果を得た。 1)ヒト鼻粘膜擦過細胞を用い免疫染色とRT-PCRにて定量的に検討したところ、健常者と通年性鼻アレルギー患者では内皮型NOS(eNOS)の発現は同等であったが、後者では誘導型NOS(iNOS)発現の有意な増強を認めた。 2)DAF-2 DAと共焦点レーザー顕微鏡を用いたリアルタイム下に観察したNO産生は、鼻アレルギー患者で亢進しており、その産生はL-NAME、ETIなどのNOS阻害剤にて抑制可能であった。 3)鼻・副鼻腔粘膜上皮においてもTNF-α、IFN-γ、lL-1βによるiNOS誘導と、ステロイドによる抑制現象が観察された。またその転写レベルの制御機構において、近年注目されているNF-kBの関与を認めた。 4)培養線毛細胞において、TNFαとIFN-γ刺激によりNO産生が著明に増加した状態では、線毛打頻度(CBF)がむしろ低下することを観察した。すなわちNOが有する鼻副鼻腔の生理的恒常性の維持と、炎症活動維持のメディエータという多機能性を認めた。 引き続き来年度は、各種NOS阻害剤による疾患モデル治療に対する効果の検討、さらにはアンチセンス法によるNOS発現抑制などの実験を計画している。
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