研究概要 |
一酸化窒素(NO)は多機能分子として近年注目されているが、鼻科領域でのNOの作用に関しては未解明な点が多い。今回、我々は鼻アレルギーと副鼻腔炎にNOがいかにかかわっているかを病態生理の面から検討した。本年度は、1)鼻アレルギー患者における炎症性サイトカイン刺激によるNO合成酵素(NOS)遺伝子の誘導、2)RT-PCR法によるサイトカイン、ケモカインの発現の検討、3)炎症性サイトカイン刺激と転写因子NF-κBの関係について研究を行い以下の成果を得た。 1)ヒト鼻粘膜擦過細胞を用いた蛍光免疫染色にて検討したところIFN-γ、TNF-αの刺激により健常者の鼻粘膜上皮細胞では誘導型NOS(iNOS)の発現が亢進したが、アレルギー性鼻炎患者ではiNOSの増強は見られなかった。 2)アレルギー性鼻炎の鼻粘膜、慢性副鼻腔炎の副鼻腔粘膜を用いたサイトカイン、ケモカインの発現をRT-PCRにて定量的にて検討したところアレルギー性鼻炎粘膜では健常者に比べてIL-8、GM-CSF、RANTES、Eotaxin mRNAの発現が有意に強く、慢性副鼻腔炎粘膜では、IL-8,GM-CSFmRNAの発現が有意に強かった。 3)副鼻腔炎粘膜培養上皮における、NF-κBのサブユニットであるP50mRNAの発現にIL-8、GM-CSF、IL-6の関与を認めた。 昨年度および今年度の研究により、鼻アレルギーにおける多量のNO産生にはiNOSが深く関与していること、健常者でも炎症性サイトカインの作用によりiNOS産生が亢進すること、その産生機序には転写因子NF-κBが深く関わっていることを明らかにした。
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