研究課題/領域番号 |
11671684
|
研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
暁 清文 愛媛大学, 医学部, 教授 (00108383)
|
研究分担者 |
白馬 伸洋 愛媛大学, 医学部, 助手 (70304623)
佐藤 英光 愛媛大学, 医学部・附属病院, 講師 (30187223)
|
キーワード | excitotoxicity / 蝸電図 / 内有毛細胞の変性 / 遅発性神経細胞障害 / 低体温 / 内耳虚血 / スナネズミ / グルタミン酸トランスポータ |
研究概要 |
グルタミン酸は中枢神経系における重要な興奮性神経伝達物質であるが、虚血などの障害を受けるとシナプス間隙に過剰に放出されて神経毒として作用し、本来の虚血病変よりも高度で広範な神経障害を引き起こす。この excitotoxicityと呼ばれるグルタミン酸による神経障害は、海馬においてはグルタミン酸拮抗剤や神経栄養因子の投与により軽減できることから、虚血病変を治療するための重要な手がかりとして注目されている。一方、蝸牛神経の一次求心性シナプスの神経伝達物資もグルタミン酸であるとされており、内耳障害時にもexcitotoxicityによる神経障害が生じている可能性がある。本年度はこれに関する研究を行い、以下の成果を得た。 1)一過性内耳虚血後の聴力変化と組織像:スナネズミに内耳虚血を負荷すると、直後に蝸電図閾値は著明に上昇するが、3-4日目には正常値に復した。しかし5日目以降には再び上昇し、10日目には最高30dB上昇した。組織学的には内有毛細胞の変性が著しくシナプス後膜には多数の空砲形成が認められた。以上より一過性内耳虚血が内耳に遅発性神経細胞障害を起こすことを証明した。 2)低体温による内耳虚血障害の防御効果:5分間の内耳虚血後、スナネズミの体温を34℃に3時間保ち、経時的に蝸電図を測定した。その結果、上記のような蝸電図の閾値上昇はみられず、低体温に内耳障害を防御する効果が認められた。 3)音響外傷動物モデルにおけるグルタミン酸の役割:グルタミン酸トランスポータ欠損マウスに音響負荷を加えると、高度の難聴が生じ主に内有毛細胞が障害された。この動物ではシナプス間隙に放出されたグルタミン酸の処理能力が低下していることから音響外傷においてもグルタミン酸によるexcitotoxicityが関与することが示唆された。
|