内耳の恒常状態を維持する機構として、ホルモンや活性ペプタイドによる液性制御が重要な役割を担っていることが明らかにされてきている。その中でもバゾプレッシン(AVP)は内耳のAdenylate cyclaseを介して、内耳に生物学的活性を有することが、我々の研究で明らかになっている。昨年度の研究でAVP負荷により、内リンパ水腫ができることも明らかになった。これらの結果は、内リンパ液性制御及び内リンパ水腫にバゾプレッシンが大きく関与していることを支持している。本年度の研究では、さらにAVP及びAVP作動性の水チャネルであるアクアポリン2(AQP2)の内耳における発現及びその局在をRT-PCR法を用いて検討すした。ラットの蝸牛及び内リンパ嚢を採取し、RNAを抽出した。さらに逆転写することによりcDNAを作成し、V2レセプター及びAQP2に特異的なプライマーでPCR増幅した。増幅されたPCR産物はアガロースで電気泳動し、エチジウムブロマイド染色しバンドの確認を行った。確認されたバンドについてはシークエンスを行い、目的の塩基配列であるかを確認した。結果として、蝸牛及び内リンパ嚢にはV2レセプター及びAQP2のmRNAが発現していた。これまで、臨床的に内リンパ水腫関連疾患においてAVPが高値であること、動物実験においてAVP投与が内リンパ水腫を形成することを報告してきた。今回の結果は、蝸牛及び内リンパ嚢にV2レセプター及びAVP作動性の水チャネルであるAQP2が存在し、内耳の液性制御に深く関わっている可能性を示唆している。このことは、AVPと内リンパ水腫に関してのこれまでの研究を支持するものであると考えられた。
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