内耳の液性制御には様々なホルモンやペプチドが関与しているが、中でもバゾプレッシンは内耳のAdenylate cyclaseを介して、生物学的活性を有することが分かっている。このようなホルモンやペプチドは、メニエール病の病態である内リンパ水腫の形成に関与している可能性が考えられる。本研究ではモルモットにバゾプレッシンを負荷することにより、内リンパ水腫を形成するか実験を行った。コントロール群では生理食塩水を、負荷群では200、400、1000μU/kg/minのそれぞれの量で7日間浸透圧ポンプを用い全身投与した。内リンパ腔の増加率はコントロール群の5.2±1.7%に比べ200μU/kg群では4.4±0.7%と有意な増加はなかったが、400μU/kg群では10.4±1.8%、1000μU/kg群では17.4±7.9%と有意に増加していた(p<0.05)。このことから、過剰なバゾプレッシンがメニエール病の病態である内リンパ水腫を作り得ることが明らかになった。次にAVPのレセプター及びAVP作動性の水チャネルであるアクアポリン2(AQP2)の内耳における発現及びその局在をRT-PCR法を用いて検討すした。ラットの蝸牛及び内リンパ嚢より抽出したRNAを逆転写し、V2レセプター及びAQP2に特異的なプライマーでPCR増幅した。蝸牛及び内リンパ嚢にはV2レセプター及びAQP2のmRNAが発現していた。今回の結果は、蝸牛及び内リンパ嚢にV2レセプター及びAVP作動性の水チャネルであるAQP2が存在し、内耳の液性制御に深く関わっている可能性を示唆している。このことは、AVPと内リンパ水腫形成が深く関与していることを示唆している。
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