インターフェロンはC型肝炎の治療薬として広く用いられているが、その副作用に難聴が起こりうることが報告されている。今回は、その実験的裏付けを目的として研究を行った。マウスでは、蝸牛が中耳空内に突出していないので、外リンパ腔内投与は行わなかった。マウス用インターフェロン(Recombinant MuIFN-β)を静脈内投与、腹腔内投与、皮下投与を行った。 静脈内投与は通常のヒトに使用する1回量の約50-100倍に相当する5000000IU/kgを1回投与、投与前、投与後30分、2時間、3時間、1週間後にクリック、8kHz短音、4kHz短音に対するABRの検出閾値の測定を行ったが、投与前後に変化は見られなかった。腹腔内投与では通常のヒトに使用する1回量の約20倍を21日間投与し、溶解液のみを投与した対照群と投与終了時に、ABR検出閾値の差を検討した。クリック、8kHz短音、4kHz短音ともに検出閾値に差を認めなかった。皮下投与でも通常ののヒトに使用する1回量の約10-20倍の1000000IU/kgを21日間背部皮下に連日投与を行い、溶解液のみを投与した群と投与終了時にABR検出閾値の差を検討した。クリック、8kHz短音、4kHz短音ともに検出閾値に差を認めなかった。また、皮下投与群では、投与終了時に蝸牛内直流電位(EP)を測定した。両耳の蝸牛第1回転と第2回転におけるEPを測定したが、いずれもインターフェロン投与群と、対照群の間に差を認めなかった。蝸牛の組織学的検討も行っているが、両群間に差を認めなかった。 今回は溶解、保存時の温度および濃度にも十分な注意を払い実験を行ったが、今回の投与量、および投与法ではマウス用インターフェロン(Recombinant MuIFN-β)には、難聴を来すような耳毒性はないと考えられた。
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