研究概要 |
1)内耳におけるグルココルチコイドレセプターの発現 内耳におけるグルココルチコイド(GC)の作用部位を明らかにするため,グルココルチコイドレセプター(GR)の発現を免疫組織学的に検討した。正常マウス内耳をホルマリン固定EDTA脱灰後,パラフィン包埋し薄切,抗GR抗体を用いて免疫組織学的に観察した。GRの最も強い発現のみられた部位は,蝸牛ではラセン靭帯であった。 2)グルココルチコイドによるラセン靭帯線維細胞のサイトカイン分泌制御 ラセン靭帯線維細胞に対するGCの抗炎症作用を明らかにするため,培養細胞を用いてGCのサイトカイン分泌抑制能を検討した。マウス由来の培養ラセン靭帯線維細胞を免疫組織学的にI型線維細胞と同定した後,5%CO2,37℃で培養,コンフルエントとした。TNF-α(100pg/ml),TNF-α(100pg/ml)+dexamethasone(100ng/ml),TNF-α(100pg/ml)+dexamethasone(1ng/ml)をそれぞれ添加,24時間培養刺激し,培養上清を回収した。それぞれの上清中のIL-6,MCP-1,MIP-2,KC,sICAM-1をELISA法にて測定した。TNF-α単独刺激ではIL-6,MCP-1,MIP-2,KC, sICAM-1すべての濃度が上昇し,dexamethasone添加群ではIL-6,MCP-1,KCの濃度抑制を認めた。ラセン靭帯線維細胞は,TNF-αをはじめとする炎症性刺激によりサイトカイン等の液性因子を産生・放出し,炎症細胞の動員および炎症の遷延化を惹起すると考えられるが,ラセン靭帯において,GCはIL-6,MCP-1,KC等の分泌を抑制し,サイトカインネットワークを断ち切ることにより抗炎症作用を発揮するものと考えた。
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