研究概要 |
マウスのEndolymphatic resting potential(EP)は、生後10日前後で急激に上昇し、生後14日目以降にほぼ成熟EPに近づく。内リンパイオン組成とEPの発達との関連性を明らかにするため、生後1日目から14日目のマウス蝸牛での内リンパイオン濃度とEPの変化をdoble-barreled微小電極を用いて同時測定した。EPはこれまでの報告通り、生後10日前後で急上昇し生後14日目にはほぼ成熟電位に達した。これに対し、うちリンパイオン濃度変化は、生後1日目よりK^+イオン濃度は次第に増加、Na^+イオン濃度は減少、Cl^-イオン濃度は増加していった。成熟EPが発現する以前の生後7日目にはNa^+、K^+、Cl^-イオン濃度はほぼadultの濃度となった。このことから発育過程においてEPとK^+の発生維持機構が明らかに異なることが判明した。RT-PCRにて1日目からマウス蝸牛においてNa,K-ATPaseの発現を認めており、内リンパイオン組成の成熟への関係が示唆されるが、それだけでは今回のイオン濃度の変化は説明できないことから、Na,K-ATPase以外のイオン輸送系が内リンパイオン組成の成熟に関与している可能性が示唆された。 さらに、我々は内リンパ液の恒常性に関与している可能性のあるneuropepteideとして、セクレチン/グルカゴン/vasoactive intestinal polypeptideファミリーの新しいメンバーであるPituitary adenylate cyclaseーactivating polypeptide(PACAP)に注目し、蝸牛での発現について検討した。RT-PCRを行ったところ、ラット蝸牛においてPACAP mRNAの発現を認めた。さらにIn situ hybridizationを行い、その局在について検討する予定である。
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