研究概要 |
全頭型脳磁界計測システムは無侵襲で脳内神経活動をきわめて高い時間分解能で計測できる。同システムの時間分解能はmsecオーダーであり、他の無侵襲脳機能計測法であるfMRI,PET,NIRSを凌駕するという点できわめて有効である。本研究では、64チャンネルの全頭型脳磁界計測システムから出力される脳磁界信号に基づいて、高時間分解能でマルチダイポール推定をするための解析系を構成し、聴覚関連情報の弁別に伴う脳内活動について検討した。 推定位置をMRI画像上へ重畳するための支援ソフト、MRI画像の処理ソフト、その他一連の脳磁界処理に必要なツールを作成した。また、同時多発的な脳内発生源に対応するマルチダイポール推定を行う際の推定基準について検討した結果、以下がその基準として妥当であることが確認された。(1)等磁界線図における複数の極大領域と極小領域から、対を選択する基準として、片半球に存在する対を優先するとともに最近接するものを対の最優先候補として採用する。(2)推定誤差の基準として、2,3,4ダイポールの場合、それぞれ上限を20%,15%,10%程度とする。(3)推定ダイポールの時空間的安定性・連続性に基づき推定を行うことを原則とする。 これに基づき、聴覚関連情報の弁別に伴う脳内活動についてodd-ball課題を用いて検討した結果、(1)聴覚情報固有の処理に関与する聴覚野の活動、(2)前頭前野、帯状回など、注意の制御に関与するネットワークの活動、(3)背外側前頭前野、海馬、頭頂連合野、側頭連合野など、記憶に関与するネットワークの活動が、初期ではほぼこの時間軸に沿って、後期ではこれらの活動が並行することが確認された。
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