過去3年間の本研究成果より、以下の成績が得られた。 1)すでにダニによる通年性アレルギー性鼻炎を有している無症候性スギ花粉症患者(スギに対する感作が成立しスギ特異的IgE抗体がCAPで陽性であるが、スギ花粉飛散期に鼻症状の季節性憎悪が認められない患者)においては、3年間の自然経過の中で約半数の患者が明らかなスギ花粉症を発症する。 2)通年性アレルギー性鼻炎を合併した無症候性スギ花粉症患者におけるスギ花粉症発症の可能性は血清中のスギ特異的IgE抗体の絶対値や季節性変動率の大きさからは判定できない。 3)無症候性スギ花粉症患者ではCryj1特異的なIL-4産生はスギ花粉飛散期には有意に増加し、その絶対値はスギ花粉症患者と有意差を認めない。 4)無症候性スギ花粉症患者ではCryj1特異的なIL-5産生はスギ花粉飛散期にも有意には増加せず、その絶対値はスギ花粉症患者のIL-5産生量よりも有意に低いレベルに抑制されていた。 5)Cryj1特異的なIFN-γ産生はスギ花粉飛散期にもスギ花粉症患者と無症候性スギ花粉症患者で有意差がなく、IFN-γがスギ花粉症の発症を抑制している可能性は否定された。 6)感作成立個体に対するスギ花粉エキスを用いた免疫療法はスギ花粉症の発症を予防しうる。 以上の成績より、感作成立個体におけるスギ花粉症の発症を規定する因子はスギ特異的IL-5産生の季節性増加であることが考えられた。また、予防的免疫療法によって感作成立個体におけるスギ花粉症の発症を予防しうる可能性が示唆された。
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