平成11年度までの研究で、HLA-A2拘束性のCTLを数種類得ることができた。平成12年度はこれらCTLがMHCクラスI上のどのエピトープを認識しているかについて調べた。HLA-A2陽性の癌細胞を大量に培養し、癌細胞表面から癌関連抗原を得ようと試みた。まず酸にて処理する方法(acid-stripping)を行ったが、十分に癌関連抗原を得ることができなかった。メラノーマ細胞の場合、酸による処理で十分に癌関連抗原を得られたが、扁平上皮癌の場合は予想に反した結果であった。そこで、セファロースを用いて扁平上皮癌より癌関連抗原を抽出することを試みた。その結果十分に癌関連抗原を得ることができたので、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)にて多数の分画にしたのち、すでに誘導したCTLがどの分画に反応しているかをELISPOT法にて調べた。するとCTLが特異的に反応する分画を数種類見いだすことができたので、Mass Spectrometryを行いアミノ酸配列の同定を試みた。その結果10ないし9個のアミノ酸配列を同定できた。1つはMet-Gly-Ala-Ala-Pro-Ser-(Leu^*lle)-(Leu^*lle)-Gly-(Leu^*lle)であり、他の一つは、Met-Gln-Ala-Pro-Ser-(Leu^*lle)-(Leu^*lle)-Gly-(Leu^*lle)であり、新しい腫瘍抗原と考えられた。当初の予定では、HLA-A2のみならず日本人に多いHLA-A24拘束性のCTLを誘導しHLA-A24特異的抗原エピトープを解析する予定であったが、HLA-A2のもののみ同定できたので、今後も続けて研究していくつもりである。 (Leu^*lle)は、Leuあるいはlleを意味する
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