平成11年度にはディジタル音声加工で子音部伸長による明瞭度改善が得られるかを検討した。子音伸長の方法は、単音節の子音部分についてゼロクロス波を反復する方法で行った。感音性難聴患者での検討では、有声子音ではマ、ナ、ラの明瞭度が改善し、無声子音ではタ、サ、シの明瞭度は改善しツ、カ、ハ、ヒの明瞭度は悪化した。 平成12年度には平成11年度の結果を踏まえ、実際の補聴器に適用するために子音の伸長を40msecの長さとし、さらに圧縮増幅による子音強調の効果を同時に検討した。検討した子音は構音様式と構音部位をできる限り網羅し日本語会話における出現頻度を考慮したゴ、ザ、ワ、セ、ダ、ヨ、フ、べ、ツ、カ、ヒ、ト、ホ、シ、ノ、ジ、パ、リ、チ、マの20音で調音結合の影響を見るために3音節語で検査を行った。感音性難聴患者の検討では子音伸長によってダ、ザの明瞭度が改善しト、チの明瞭度が悪化した。子音伸長と圧縮増幅を組み合わせるとホ、ダ、ザ、ジの明瞭度が改善しセ、ヒの明瞭度が悪化した。ディジタル音声加工は上記の明瞭度改善ならびに悪化の結果を示し、総合的には日本語会話理解を改善すると考えられた。しかし、難聴患者によって改善効果が高い例、改善効果が得られない例などが認められた。感音難聴患者の個人差に注目し、症例を増やし、難聴患者を分類し、子音伸長が有効な患者の特長を明確にする必要がある。
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