平成11年度成果 良性発作性頭位眩暈症のメカニズムを明らかにするため、半規管結石症のモデルを作成した。今年度はとくに膜迷路を損傷することなく摘出した全内耳を用いたため、臨床における半規管結石症に最も近似したモデルを作ることができた。すべての処理、操作はリンゲル液内にて行った。まず、全迷路を摘出した時点で、数匹のカエルにおいてはすでに卵形嚢より遊離した耳石が後半規管内を移動しているのが観察された。耳石は一塊となって、半規管内面を滑るように移動していた。これは従来行ってきた、摘出した単一半規管に耳石を挿入して観察した運動様式と全く同一であり、正常の迷路内でも耳石は遊離すれば、動力によってよく運動することがしめされた。内リンパがある程度粘稠であれば耳石は遊離しても移動しないとの意見もあるが、今回の実験で内リンパの粘稠度は高くなく、耳石の移動を阻害することはないこともわかった。 頭位を変換したときにのみめまいが起こるのが本疾患の特徴であるが、一般に緩徐に頭位を変換すればめまいが起こりにくく、素早く変換すればするほどめまいは強度になることが知られている。このため、患者は自己防衛的につねに緩徐に頭部を動かそうとする。この現象を実験的に解明するために、単一半規管結石症のモデルを用いて、緩徐に半規管の位置を変換したときと、素早く位置を変換したときで生じる膨大部神経活動電位を記録比較した。その結果、緩徐に変換したときの方が、最大スパイク数が少なく、電位立ち上がりの潜時が長いことが判明し、移動する耳石塊の加速度に応じてめまい感の強弱が決まることが明らかとなった。
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