良性発作性頭位眩暈症(BPPV)のメカニズムを明らかにするため、カエル内耳を用いてクプラ結石症と半規管結石症のモデル作成を試みた。実験はリンゲル液内にて行い、球形嚢耳石塊にて両モデルを作成した。摘出後半規管モデルの実験では、半規管結石症が反応潜時と持続時間の面からBPPVの病態であると考えられた。ついで、.膜迷路を正常に保った内耳を用いて半規管結石症のモデルを作成した。このモデルでも、耳石は一塊となって、半規管内面を滑るように移動していた。これは摘出した単一半規管での運動様式と同一であり、正常迷路内でも耳石は遊離すれば運動することがしめされた。すなわち、内リンパの粘稠度が耳石の移動を阻害することはないことがわかった。 BPPVでは、頭位を素早く変換すればするほどめまいは強度になる。この現象を実験的に解明するために、半規管結石症モデルで、位置変換の速度を変えて実験を行った。その結果、緩徐に変換すると最大スパイク数が少なく、電位発生の潜時が長いことが判明し、移動する耳石塊の加速度に応じてめまい感の強弱が決まることが明らかとなった。 モルモットでのBPPVのモデルを作成するために、内耳にエラスターゼを注入し、卵形嚢耳石器の状態と頭位眼振を観察した。注入翌日には、卵形嚢耳石は脱落し、前庭尾側へ移動していた。また、主として頭位を矢状面で変換すると眼振がみられた。眼振の性質と耳石脱落との関係は一定ではなかったので、詳しい検討は今後の課題である。モルモット中耳にドリルで振動を与えた際も、約半数の動物で球形嚢耳石の脱落がみられた。これが中耳手術後のBPPV発症のメカニズムと推測された。
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