研究課題/領域番号 |
11671705
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
森山 寛 東京慈恵会医科大学, 医学部・耳鼻咽喉科, 教授 (60125036)
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研究分担者 |
志和 成紀 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (20235766)
小島 博巳 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (60234762)
山口 龍二 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (50182449)
辻 富彦 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (30236880)
三谷 幸恵 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助手 (30233894)
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キーワード | 上皮細胞の増殖と分化 / 真珠腫 / サイトカイン / 細胞周期関連因子 / ケラチノサイト / アポトーシス |
研究概要 |
炎症が上皮増殖に及ぼす影響について、真珠腫組織ではInterleukin-1α(IL-1α)、Transforming growth factor-α(TGF-α)、Keratinocyte growth factor(KGF)をはじめとするサイトカインの発現の亢進が認められ、さらにこれらのサイトカインの発現は上皮下の炎症の状態によって左右されることが示された。そこで、炎症が上皮細胞の増殖に及ぼす影響について培養ケラチノサイトを用いて検討を行った。上皮下組織中の線維芽細胞が産生するKGF蛋白がケラチノサイトの発現する細胞周期関連因子(cyclin dependent kinase:cdk)にどのような影響を与えるかにつき調べたところ、ケラチノサイトに各濃度のKGFを付加すると、cdk2、cdk4蛋白の発現の亢進が確認された。 分化、細胞死の機構について正常皮膚と真珠腫上皮を用いて検討した。分化のマーカーとしてinvoucrinを、またアポトーシス抑制因子としてBcl-2のファミリーであるBcl-XLを選び、蛋白の発現を免疫組織学的手法を用いて調べ、さらにTUNEL法により観察した。 これらの結果から、真珠腫上皮においても正常皮膚上皮と同様に上皮細胞の分化・細胞死の機構は保たれ、その一部はBcl-XL蛋白によって調節されているであろうと思われた。すなわち、炎症が起こると、上皮下の炎症細胞より、KGF、IL-1α等のサイトカインが産生され、また上皮細胞自身からも、TGF-αなどが産生される。これらのサイトカインは上皮の増殖を促進するが、上皮細胞の分化と細胞死はBcl-XL蛋白などの因子によって調節され、最終分化と細胞死は正常通り行われる。そしておそらくこれらによって生じたdebris自身が再び上皮や上皮下組織に影響を与え、増殖を導くのであろうと考えられた。
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