研究概要 |
唾液腺腫脹を来たす疾患のうち唾液腺症は非炎症性、非腫瘍性に両側の腫脹を示すのが特徴である。種々の原因で起こるが、拒食症や女性の性ホルモンの異常で発症する。我々の検討した50症例のうち27症例は摂食障害に基づくもので耳下腺の他顎下腺腫脹を示す症例が多くみられた。とくに耳下腺では腺房細胞の膨化が著明で電顕的に腺房細胞内分泌顆粒の増加と芯を含まぬ一相性の電子密度の低い顆粒が特徴であり,若年者では筋上皮細胞内リポフスチン顆粒が中高年者の如く多数認められた。一方,顎下腺では電顕レベルでの変化は正常者に比較して少い。 免疫組織学的に正常及び唾液腺症の耳下腺腺房両方にアミラーゼ合成が同様に行われていることが判明した。また腺房細胞にはエストローゲンリセプターが存在し,性ホルモンが唾液分泌や分泌顆粒の形成過程に何らかの調整を行っていると考えられる。閉経後の女性には口内乾燥を訴える例が多く唾液分泌量を左右すると考えられるが、顎部手術に採取した耳下腺、顎下腺では耳下腺脂肪変性が目立つものの後者では明らかでなかった。実験的に卵巣摘出を行ったラットにおいても顎下腺組織の変化は少かった。同じ実験ラットについて電顕的,免疫組織学的検討を引き続き行っている。
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