我々は今までにネコ、サルにおいて視運動請願振の第一次中継核である視索核からの脳幹内での投射様式について検討し、3経路がることがわかった(Watanabe'93;Kato'95;渡辺昭司'95a;渡辺昭司'95b)、第一には交連線維を介し対側の視索核へ投射するもの、第二に下部脳幹まで軸索を伸ばし直接前庭核に投射する経路、第三に橋核に投射する弱い経路とがある。第二の経路は下部脳幹へ投射する途中で外側終止核へ側枝を出す。従来、外側終止核は視運動性眼振の垂直成分に関与すると言われているが、水平の視運動性眼振を担っている視索核から多くの投射を受けている。外側終止核の視運動性眼振に対する役割を明らかにするために、我々は2匹のサルを用いて外側終止核を破壊し、破壊の前後で視運動性眼振を観察した。終止核を破壊すると上向きに緩徐相を持つ視運動性眼振が解発されなくなった。下向きの視運動性眼振は障害されなかった。水平成分については傷害側に向緩徐相を持つ視運動性眼振に軽度の解発不良が認められた。この結果は、外側終止核が視運動性眼振の上向き緩徐相振を担っているが水平成分からもなんらかの影響をされていることを示唆した(1999年日本めまい平衡医学会にて発表)。さらに、3匹のサルを用いて、両側視索核間の投射を遮断したモデルを作成し、視運動性眼振におよぼす影響について検討した。遮断後、それぞれの動物において視運動性眼振の緩徐相速度の初期急速増加及び最大緩徐相速度の有意な低下が認められた。視運動性後眼振は影響されなかった。組織免疫学的な報告と合わせると、それは両側視索核間の投射は興奮性ニューロンを介した投射であり、それは反対側の抑制性の細胞内ニューロンへ投射している可能性を示唆する所見と思われた(2000年 渡辺昭司)
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