内リンパ水腫の成因に関して種々の原因を上げることができるが、明確な事実はない。1938年山川らが報告したヒト内リンパ水腫例の内リンパ嚢の組織を詳細に検討すると好中球、リンパ球、マクロファージを認めると共に高度な線維化が存在していた。このような組織変化は炎症によって発現したと考えられるのが一般的である。内リンパ嚢にマクロファージがあることは以前より良く知られている。Rask-AndersenH.らはその形態学的特徴を詳細に検討しているが、機能面に関しての報告はない。我々は内リンパ嚢マクロファージの機能に関して研究を行った。実験計画に従い遺伝的にマクロファージの活性のないC3H/HeJマウス(n=5)を使用し、これらの内頚動脈よりzymosanを用い、アナフィラトキシン活性を確認したマウス血清を注入し、内耳組織の観察を行った。コルチ器、蝸牛神経節細胞などには変化は見られなかったが、血管条の一部に萎縮が認められた。内リンパ嚢の形態には異常はなかった。内リンパ嚢内のマクロファージの数は、平均2.6個であった。この数はコントロール(血清のみ注入した群)と比べて有意な差はなかった。現在マクロファージ活性を有するCH-Heマウスを使用し同じ実験を行っている。またマウスの中耳骨包を開け、自家製の銀ボールを蝸牛に留置し、再現性のある蝸電図を得ることができるようになった。上記のマクロファージの活性のある、なしのマウスの蝸電図を現在測定し比較検討し、若干の知見を得つつある。また、今後はこれらのマクロファージを採取し、培養後機能面を検索して行く予定である。
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