手術に伴い発声や嚥下機能などの障害が著しい頭頸部癌では、個々の腫瘍の抗癌剤に対する感受性に基づき化学療法を行うことはQOLの向上のため必要とされる。そこで、頭頸部癌の標準的化学療法剤であるCisplatinと5-FUの併用療法を感受性試験(Histoculture Drug Response Assay、HDRA)に基づいて行うことが可能か否かについて研究した。対象はCisplatin/5-FU併用療法を行った33症例で、27例はネオアジュバント化学療法として、6例は再発に対する化学療法として行った。原発部位は下咽頭12例、口腔10例、中咽頭5例、副鼻腔6例である。MTT assayをエンドポイントとしたHDRAを行い、Cisplatinは20μg/mlの濃度で、5FUは120μg/mlの濃度で腫瘍発育阻止率(I.I.)50%で判定した。33例の抗癌剤治療に対する臨床奏効率は51%であった。Cisplatinは33例が評価可能であり、HDRA陽性18例中CR/PRは14例、HDRA陰性15例中NC/PDは13例であり、真陽性率78%、真陰性率80%、正診率79%であった。5FUは11例が評価可能であり、HDRA陽性6例中CR/PRは3例、HDRA陰性5例中NC/PDは4例であり、真陽性率50%、真陰性率80%、正診率64%であった。両者の組合せによる奏効率はCisplatinと5FUともにHDRA陽性が75%(3/4)、どちらか陽性が25%(1/4)、ともに陰性が0%(0/3)であった。これらの結果より、HDRAではCisplatinと5FUともに真陰性率が高く、無効例の判定に有用と考えられた。また、両者の判定結果を組み合わせることにより、多剤併用療法においても無効例をより正確に判定できることが明らかとなった。 頭頸部癌にCisplatin/5-FU療法を行うにあたり、HDRAによる感受性予測に基づく治療は十分に臨床的意義を有する。
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