研究概要 |
片眼摘出および片眼遮断ラットを用いて脳内ヒスタミン受容体の変化をオートラジオグラフィーを用いて測定した。成熟ラットにおいては片眼摘出後5日目に対側上丘でH3受容体の著しい増加が観察され、片恨摘出後15、30、45日目においても同様に対側上丘でのH3受容体の著しい増加が観察された。この効果はヒスチジン脱炭酸酵素阻害剤(S)-α-フルオロメチルヒスチジン((S)-α-fluoromethyl histidine : FMH)持続投与モデル、キノリン酸(Quinolinic Acid : QA)局所投与モデルでは消失した。幼若ラットにおいても片眼摘出により対側上丘でH3受容体の増加が見られたが片眼遮断による変化は見られなかった。H1,H2受容体では片眼遮断、片眼摘出のいずれにおいても明らかな変化は検出されなかった。片眼摘出ラット上丘におけるH3受容体のup-regulationが、G蛋白の活性化を伴うかをGTPγ[^<35>S]オートラジオグラフィー法にて確認した。[^<35>S]GTPγS-bindingは、片眼摘出後対側に対して有意に上昇していた。この現象はH3受容体アンタゴニストにより抑制され、H1、H2受容体アンタゴニストによっては影響を受けなかった。片恨摘出後のH3受容体のup-regulationはG蛋白とカップリングしていることが示された。 片眼摘出後の対側上丘で著しいH3受容体の増加が見られ、H3受容体が視覚系とも少なからぬ関わりを持っていることが示唆された。キノリン酸の局所投与によりこの増加効果が消失したことから、増加したH3受容体は除神経された細胞の後シナプス側の神経細胞に存在していることが考えられる。以上の結果からH3受容体は除神経に伴ういわゆるdenervation supersensitivityに密接に関連があることが示唆された。
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