(1)ヒト結膜乳頭増殖組織内におけるSCF/c-kit受容体の局在の検討 網膜剥離手術前に切除した眼球結膜と代表的な結膜アレルギー疾患である春季カタル患者の結膜乳頭切除術時に採取した結膜乳頭の、凍結切片を作成し、抗SCF抗体及び抗c-kit受容体抗体で免疫組織化学染色を行った。この結果、共に結膜下線維芽細胞に主にSCFの発現を認めた。また乳頭増殖組織では血管内皮細胞にもSCFの発現をみとめた。c-kitの発現は結膜上皮及び肥満細胞に認められた。 (2)涙液中SCFの測定 正常者、季節性アレルギー性結膜炎患者、春季カタル患者から10μlの涙液を採取し、ELISA法を用いて涙液SCFの定量を行った。この結果、正常者及び季節性アレルギー性結膜炎患者涙液からはSCFは検出されなかったが、春季カタル患者涙液から483±286pg/mlのSCFを検出した。 これらの結果より、結膜乳頭増殖を伴う重症アレルギー性結膜疾患である春季カタルではSCFが肥満細胞の刺激を通じてその病態形成に関与している可能性が示唆される。
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