研究概要 |
本研究は、家兎眼における硝子体手術中の液空気置換による網膜障害を検討し、手術方法の改良を実施することを目的とし、これまでに硝子体手術時の液空気置換による網膜障害が、空気噴流によって生じることを家兎眼を用いて電子顕微鏡的に網膜の病理変化が空気の噴流圧の上昇とともに増強することを観察した。さらに病理組織変化が液空気置換の直後にどの程度の範囲にみられるか生体染色法によって把握できるかtrypan blueを用いて示した。本年度はこの障害網膜の経時的な変化と障害予防法について検討した。 1)本モデルにおいて一定時間の空気環流後に硝子体腔をBSS液に置換し、BSS置換直後、1時間後、1日後、3日後にみられる網膜障害の程度をtrypan blueを用いた生体染色の病理組織学的な手法で観察した。BSS置換直後、1時間後ではtrypan blueの染色領域に大きな変化は見られなかった。1日後、3日後では網膜前の線維素による影響が大きく、網膜剥離の出現眼もでたため、安定したtrypan blueの染色結果が得られなかった。本モデルにおける欠点として、術後炎症が問題となり、ステロイド使用や水晶体温存手術などのモデル再検討を施行中である。そこで当所予定した網膜創修復機転の適当な時期の選択ができず、グリア細胞の動態をGFAP, Vimentin, GLUT1,2,3の抗体を用いての検討は次年度の課題となった。 2)硝子体手術手技の改良 網膜表面を保護する粘弾性物質を網膜面に塗布して液空気置換すると液空気置換直後のtrypan blue、染色領域は軽減する傾向を示した。どのような塗布法が適当か、粘弾性物質の種類による差などを次年度に検討したい。
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