研究課題/領域番号 |
11671756
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
平形 明人 杏林大学, 医学部, 助教授 (80173219)
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研究分担者 |
樋田 哲夫 杏林大学, 医学部, 教授 (40129622)
渡邊 卓 杏林大学, 医学部, 教授 (00191768)
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キーワード | 硝子体手術 / 視野欠損 / 液空気置換 / trypan blue / グリア細胞 / 粘弾性物質 |
研究概要 |
本研究は、家兎眼における硝子体手術中の液空気置換による網膜障害を検討し、手術方法の改良を実施することを目的とし、これまでに硝子体手術時の液空気置換による網膜障害が、空気噴流によって生じることを家兎眼網膜の病理組織検討から観察、この病理変化の部位をin vivoでtrypan blue染色の生体染色法によって把握できることを示した。この障害網膜の経時的な変化と障害予防法について検討した。(1)家兎モデルに術中ステロイドを眼内投与して、一定時間の空気灌流後に硝子体腔をBSS液に置換し、BSS置換直後、1時間後にみられる網膜障害の程度をtrypan blueを用いた生体染色で観察したととろ、BSS灌流直後と1時間後でのtrypan blue染色領域に変化は見られなかった。網膜内層障害が顕著とならない空気噴流圧で液空気置換を施行し免疫組織学的に検討すると、灌流針対側の網膜がGFAP陽性となり、空気噴流によってグリア細胞の病的活性化が生じることが示唆された。(2)臨床例の検討:液空気置換による周辺視野欠損の合併症について、当施設におけるretrospectiveな検討では、医原性裂孔などが生じた例、血清塗布した例のように、空気潅流下での手術操作に時間を要する症例に多いことが確認された。周辺視野障害合併例の長期経過で、視野欠損に対応する網膜の色素沈着が明らかになるものがあり、内境界膜傷害がなくても、細胞の病的な活性化が誘発されると考えられた。また、乳頭ピット症候群のような先天異常の関与する疾患に周辺視野欠損の合併頻度が高くみられた。空気刺激が網膜自体の脆弱性にも関与する可能性が示唆された。(3)空気噴流圧30mmHg以下を用いるようになってから、明らかな視野欠損例はみられなくなった。家兎網膜表面を粘弾性物質を網膜面に塗布して液空気置換するとtrypan blue染色領域は軽減する傾向を示したが、その保護効果は安定しなかった。粘弾性物質の網膜上の固定が不安定なことと存在部位の視認性が不良なことが大きな課題であると考えられた。
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