研究概要 |
本研究のテーマはぶどう膜炎治療における薬剤感受性と分子生物学的背景である. 特に平成11年度に試みる検討項目として,臨床的事項では薬剤感受性試験(細胞ELISA)の確立.および,感受性にもとずいた臨床経過のレトロスペクテイブスタデイを挙げた. また,基礎実験としては薬剤感受性因子の検討としてステロイド薬の受容体について,その挙動,サイトカイン,酵素活性の評価を予定として掲げた.本年度に至急された研究費で下記の検討を行った. 1)ベーチェット病患者のステロイド薬感受性について ベーチェット病で全身的にステロイド薬を投与することは禁忌とされている.しかし,長期的にみてステロイドで良好な経過をたどる例も少なくはない.治療効果が相違する理由や背景はあきらかではない.その理由に,個々の感受性が相違するためと考えた.そこで細胞ELISA法を用い,薬剤感受性試験に用い,患者の感受性を測定した.その結果感受性群と非感受性群では臨床経過が相違することが解った.この結果はOphthalmic Research誌に報告した. T.Tanaka,et al Ophthalmic Research 32,41-43,2000. 2)原田病の薬剤感受性と予後について 原田病におけるステロイド感受性と予後の関係についてプロスペクテイブに検討した結果を1999年6月に開催されたヨーロッパ眼科学会総会にて,Susceptibility to immunosuppresive agents in patients with Vogt-Koyanagi-Harada disease.という演題で口演発表し,その原著を学会雑誌に投稿中である. 以上のごとく,日常診療に薬物感受性試験を導入することは,治療の効果を高める事や,今後の薬物の評価にとっても有用であることを確認した.従って,感受性に関与する因子や具体的な細胞内の機構を解析している段階にある.
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