研究概要 |
本研究では,磁気刺激パラメータを変えて得られる磁気閃光感覚の基礎特性について,渦電流値という刺激量情報を統合した検討を行うことを目的とする。すなわち,刺激パラメータを制御できるように現有の磁気刺激システムを改良し,磁気刺激を行い,被験者の磁気閃光感覚を測定・解析し,時間的・空間的基礎特性に対応する特性の測定を実施し,磁気閃光現象の特性について論じた。 (1)磁気刺激の受容部が光受容細胞層であるかを調べるため,順応の影響を検討した。磁気閃光感覚の特性・機序の議論には,視覚系の明るさ知覚特性が参考になる。そこで,ちらつき知覚の時間的特性,空間的特性への影響を中心に測定する。健康な被験者を対象とし,磁気閃光を知覚する最小刺激量で表す磁気閃光閾値について,周波数等の磁気パラメータを変えて測定した。 (2)網膜細胞モデルを用い,各測定結果および渦電流の推定値を用い,磁気刺激に反応する網膜の空間的範囲や細胞層を検討した。実際に発生させる磁界に誘導されて生じる渦電流の推定値として,シミュレーションにより求められた電流の密度分布を用いた。 (3)電気生理学的眼検査への応用可能性の検討,視覚系の諸特性との比較,磁気閃光現象の全体的な考察をおこなった。 次のことがわかった。磁気閃光感覚の特性は光刺激に対する視覚系特性と類似していること,磁束密度の値と磁気閃光を知覚する視野範囲には関係があり,視野範囲の増加とともに上下部の磁気閃光が強くなること,電気生理学的眼検査への応用可能性があること,視野下方部の磁気閃光閾値の測定が磁気閃光現象の議論に適当といえること。得られた結果は,実質の刺激量である網膜上の誘導電流密度が推定されている刺激系で得られた結果であり磁気閃光現象を論じる際に有用と考えられる。
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