研究概要 |
1.鶏胚角膜におけるプロテオグリカン(PG)合成を発生の日時を追って、免疫組織化学的に調べた。その結果、発生の初期(7日目)に合成されるケラタン硫酸(KS)の硫酸化の程度は低く、その後角膜の透明化が進むに従って、硫酸化の程度は増大していった。KS糖鎖の硫酸化と角膜透明化が密接な関係にあることが示唆された。 2.角膜実質細胞を生体外で培養すると、ケラタン硫酸プロテオグリカン(KSPG)合成が著しく減少することが以前から報告されている。我々はこの機構を明らかにするために、器官培養したヒヨコ角膜が合成したPGと細胞培養した実質細胞が合成したPGを比較分析した。分析に当たっては、種々の糖鎖分解酵素、コアタンパク質に対する抗体を用いた。その結果、細胞培養によって高度に硫酸化されたKSPGは著しく減少したが、低硫酸化KSPGやほとんど硫酸化されていない「ケラタン」PGは逆に増加していた。この結果は、細胞培養したときKS糖鎖の硫酸化は著しく減少するが、糖鎖自体の合成やコアタンパク質の合成はほとんど減少しないことを示している。 3.上の結果は、KS糖鎖の硫酸化に関与するGlcNAc-6-O-sulfotransferaseが角膜の透明化に密接に関係するとともに、環境の変化にいち早く対応しKS合成のkey enzymeとなっている可能性を示唆している。そこで、ヒヨコ角膜(5924眼分)から本酵素の精製を試みた。CM-Sepharose、WGA-agarose、GlcNAc-agarose、3',5'-ADP-agaroseによるchromatographyによって、本酵素は収率8.4%、887倍に精製された。本酵素は、非還元末端にあるGlcNAcに特異的に硫酸を転移し、糖鎖内部のGlcNAcには硫酸を転移しない。本酵素反応の至適pHは6.0であり、これまで見つかっているいくつかのsulfotransferaseとは異なる。本酵素タンパク質のN末端側アミノ酸はブロックされていた。内部のアミノ酸配列は測定中である。
|