研究概要 |
当研究室では,proteoglycan(PG)合成と角膜透明性との関係について研究を続けているが,最近はそのPGの糖鎖の合成に関与する糖転移酵素や硫酸転移酵素に焦点を当てている。昨年度までは、これら転移酵素のヒヨコ角膜からの精製を行ってきたが,その精製もほぼ終了したので,今年度はいくつかの転移酵素のcDNAのcloningを試みた。 1.ヒヨコ角膜からのchondroitin 4-sulfotransferase(CH4ST)とchondroitin 6-sulfotransferase(CH6ST)のcDNAのcloning:角膜のchondroitin sulfate(CS)系の糖鎖としては以前からchondroitin 4-sulfate/dermatan sulfate(C4S/DS)が圧倒的に多く,chondroitin 6-sulfate(C6S)は少ないことが知られている。このC4S/C6Sの割合を決めているのが,上記の2つの硫酸転移酵素CH4STとCH6STである。そこでこれら酵素が角膜分化のマーカー酵素になるかを明らかにするために,ヒヨコ角膜から両酵素のcDNAのcloningを試みた。CH6STに関しては,chick chondrocyteで既にcDNAがcloningされているのでそれとの相同性から,またCH4STに関してはヒトおよびマウスでcDNAがcloningされているのでそれらとの相同性から,ヒヨコ角膜両酵素のcDNAをcloningした。まだfull-lengthのcDNAをcloningするまでには至っていないが,CH6STについてはその読み取り枠(ORF)の大部分の塩基配列が決定されており,その配列はchick chondrocyte cDNAと98.6%の相同性を示した。従って,軟骨組織と全く同一のCH6STが角膜でも発現していると考えられる。CH4STについては,ORFの3'-側約半分の塩基配列が決定されているが、その塩基配列はマウスcDNAと84%、ヒトcDNAと86%の相同性を示した。アミノ酸配列レベルではその相同性はさらに高く、両者に対して97.7%の値を示した。この結果は、マウスCH4ST、ヒトCH4STと非常に相同性の高い酵素が角膜でも発現していることを示唆している。 2.keratan sulfateの硫酸化に関与するN-acetylglucosamine 6-suIfotransfersaseやCS糖鎖の伸長に関与するchondroitin synthaseのcDNAのヒヨコ角膜からのcloningについても、現在進行中である
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