研究概要 |
今年度は、昨年度の実験で得られた検体を使用し、気管閉塞術が2型肺胞上皮細胞の成熟度に与える影響を、細胞あたりのグリコーゲン含有量と成熟ラメラ小体の数を指標に検討した。その結果、気管閉塞を施行した群と施行しなかった群間で、両指標とも有意差を認めなかった。さらに、sterological morphometryの手法を用いて、気管閉塞が肺の構造に与える変化を検討したところ、気管閉塞によってガス交換に関与する肺実質が増大し、肺胞数が増加し、同時に肺胞中隔が薄くなり、肺腺房構造が複雑化していることが判明した。 以上の一連の研究により、ラットモデルにおいて以下の結論を得た。 1)胎生初期から横隔膜欠損があっても、実際に胎児肺の成長が悪影響を受ける時期は管状期以降であり、胎児治療により病態を克服できる可能性が高い。 2)胎児気管閉塞により単に肺の乾湿重量が増大するだけでなく、ガス交換に関与する肺実質が成長し、その結果肺胞数が増加し、肺腺房構造が複雑化する。 3)一方、胎児気管閉塞により、2型肺胞上皮細胞の数が減少するが、上皮細胞あたりのグリコーゲン含有量と成熟ラメラ小体の数は影響を受けない。また、Surfactant Protein A,B,Cの蛋白含有量は影響を受けない。 4)ヒトにおいても、適切な時期と期間さえ選べば、胎児気管結紮術はサーファクタントに及ぼす影響を最小限に留めつつ十分な肺成長を得ることができる治療法であると考える。
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