研究概要 |
対象:岡崎生理学研究所の実験動物関連施設、尾崎毅先生から入手した無神経節ラットを用いた。方法と結果:無神経節ラットの結腸を凍結ミクロトームにて凍結切片として神経の汎用マーカーである抗PGP9.5を用いて腸管神経の分布の状態を観察した。輪状筋層内の神経線維はラットの無神経節結腸では対象と比較し増生を認めなかった。骨盤神経由来の神経線維はマーカーとして用いたTH,NPY(交感神経)とVACht(副交感神経運動枝)も内輪筋層では同様の所見を呈した。腸間膜由来の神経(副交感神経知覚枝)のマーカーとして用いたSPとCGRPpは輪状筋層では乏しく、粘膜下層に豊富に認めた。これらのことから、筋層と粘膜下層は異なる種類の神経支配を受けている可能性が示唆された。また、シナプス開口関連蛋白はシナプトタグミンがシナプス小胞関連蛋白質としての染色性が優れており、SNAP25がシナプス前膜関連蛋白質としての染色性が他の抗体と比較して優れていた。さらに、神経マーカーとシナプス開口関連蛋白の分布を免疫二重染色をし、共焦点レーザー顕微鏡(MRC1024,Bio-Rad,Warford,UK)で観察した。結果として、ラットの無神経節腸管では骨盤神経由来の神経と腸間膜由来の神経のいずれもシナプス開口関連蛋白を発現しており、神経分泌機能を有する神経線維であることが推測された。しかし、一部のPGP9.5陽性線維にシナプス開口関連蛋白の発現の低下を認め、この神経の由来を検討中である。ヒトに関しては現在までに入手できた資料を中心に検討中であるが、ラットと類似した所見が得られつつある。今後の検討事項:将来的にこれらの神経の腸管への作用を詳細に研究するためには、神経分泌関連蛋白と平滑筋のレセプターを定量化して検討する必要性が出てくると考えられる。
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