移植片生着が困難な臓器である腸管が、免疫抑制剤投与下に生着した場合、移植片局所免疫応答はいかなる特徴を示すか、用いる免疫抑制剤の種類でどのような相違があるか、ラット小腸移植モデルを作成し、移植片粘膜固有層に浸潤したリンパ球の分布動態につき比較検討を行った。 体重150-200gの同種異系雄性ラット間(DA→PVG)で上部空腸15cmを移植し、術後一定期間免疫抑制剤を投与した。RegimenとしてはFK506投与群;0.3mg/kg/day×14days、FTY720投与群:0.5mg/kg/day×14daysと設定した。投与期間終了後、犠死にて移植片を採取し、HE染色検鏡にて拒絶度の組織学的評価をしたのち細切し、既に確立した方法により粘膜固有層浸潤リンパ球を採取した。リンパ球表面抗原を標識してフロー・サイトメトリー解析し、サブセット分布状況と活性化状況(IL-2レセプター発現率)を検討した。 FK506投与群の移植片では、拒絶例に比して(1)浸潤リンパ球数は少数(2)CD8αβ陽性サブセットが数・分布率ともに低値(3)しかしIL-2レセプターの発現率は低下していない、という明確な特徴が得られた。つまりFK506投与では、細胞障害性リンパ球の浸潤抑制が免疫抑制の主体であることを示唆する。一方FTY720投与群においては、浸潤リンパ球数、サブセット数ならびに分布率、IL-2レセプターの発現率に、統計上の有意性をもった一定の傾向がみられなかった。投与量、投与期間を増減して検討しても同様であった。これは、FTY720単独投与では安定した移植片生着が、われわれのモデルでは最終的に得られなかった要因が大きい。今後は併用療法など更なる検討が必要と思われる。
|