研究概要 |
小腸粘膜下層組織(SIS)は組織工学で使用される細胞外マトリックスであり,腹壁,膀胱,腱,血管など様々な器官の再生のための足場として使用される.今回,SISにより再生した小腸の形態学的評価を行った. Lewis系雄性ラットを用いて開腹後回腸ループを遊離し,その中央部を切断し,ラットドナーから作製したSISチューブを間置した.回腸ループの両端は二つの回腸痩として腹壁に固定した.術後2,4,8,12,24週目にラットを犠牲死させ,新生小腸の組織学的・免疫組織学的検討を行った. 術後2週目にSISグラフトへの多数の炎症細胞の浸潤と明らかな血管新生を認めたが,管腔内面の上皮の被覆は見られなかった.炎症細胞の数は時間が経つにつれて減少した.術後4週目にSISグラフトの両端内面に粘膜層が認められ,グラフトの約25%の長さを被覆していた.術後12週目にグラフト管腔の内面は完全に粘膜層に覆われ,筋層細胞も認められた.新生小腸粘膜に小腸粘膜細胞にある上皮細胞,パネート細胞,杯細胞および腸内分泌細胞が認められた.術後24週目に新生小腸は本来の小腸と同じ層構造を示した.しかしながら,神経線維の存在は認められなかった. 今回の研究で,再生した新生小腸粘膜は.形態学的に本来の小腸と類似しており,組織学的に再生プロセスは自然な治癒過程と一致していた.したがって,SISは薪生小腸の作成に有用な材料である.
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