小児固形悪性腫瘍のうちで最も頻度高い神経芽腫は集学的治療の導入によりその治療成績は向上しているが、早期に遠隔転移をきたした症例はいまだ予後不良である。本研究は神経芽腫を中心として、その転移に関して接着分子の発現と転移との関係を明らかにすることが目的である。日本大学第一外科および関連施設で手術を施行したの凍結標本およにパラフィンブロックを用いて検討を行った。 1)接着分子の免疫組織学的発現の検討 接着分子CD44、カドヘリン、VLA-4を中心とするインテグリンの発現を免疫組織染色法(Biotin-Streptoavidin法)で発現を各腫瘍において検討した。CD44に関しては標準型であるCD44Hおよび変異型であるCD44v6に対する抗体を用いて検索する。その結果、CD44Hは予後良好であり、1才未満症例、早期症例に発現が認められ、1歳以上に進行症例には発現は認められなかった。この結果は最近の欧米の報告と同様であった。変異型のCD44v6発現の検討では、CD44Hの同様に1歳未満の予後良好例に発現が認められ、予後不良群では発現が認められなかった。この結果は成人の胃癌、大腸癌ではCD44v6は血行性転移と関係するとの報告があるが、神経芽腫では逆に予後良好の因子となり興味ある所見であった。カドヘリンおよびVLA-4に関しては、神経芽腫では明らかな発現が認められず、予後との相関は明らかではなかった。 2)血管新生因子およびそのレセプターの発現 免疫組織学的およびin situ hybridization法により検討した結果、予後不良群にVEGFの発現が認め、同時にそのレセプターであるFlk-1の発現が認めた。神経芽腫の血管新生にはVEGF-Flk-1のparacrineおよびautocrine systemの関与が示唆され、VEGFの発現は予後に関与する可能性が明らかになった。
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