研究概要 |
昨年までの実験で胎生50日,60日および90日で閉塞性尿路障害モデルを作成し羊胎仔水腎症モデルを作成した. 胎生60日以前の尿路閉塞モデルにおいて多嚢胞腎の病理像を得た.さらに50日の早期閉塞では文献検索上初めてのPotter Syndrome羊が生まれた.以上のモデルの中で肺の形態を顕微鏡的に検索したが,胸郭の変形により肺容量は小さくなるが肺の低形成は認めなかった.残存した糸球体による尿産生で,肺組織の発育には障害は認めなかった.昨年までの実験で多嚢胞腎の発生には妊娠早期では,未熟な糸球体が産生した尿により近位尿細管が拡張する所見を得た.尿路閉塞時期による相違で遠位尿細管,集合管の拡張がおこり,これが多嚢胞腎発生に関与していることもわかった.また妊娠後期の尿路閉塞では腎の破壊は認めず水腎症であった.昨年度糸球体面積を測定した結果,多嚢腎では腎髄質側の糸球体が有意に小さくなっていた.これらの原因は血流障害か,発生障害か不明であるが,本年度の電子顕微鏡を用いた検索により多嚢腎発生のメカニズムとPotter Syndrome発生の原因および現在では致死的疾患とされている本病態の解明が可能と思われた.研究成果については過去2年間で研究代表者の北川が太平洋小児外科学会で3つの演題を採用され,すべてがJournal of Pediatric Surgeryに採用された.またKevin Pringle教授が国際胎児治療学会において2つの演題を発表している.国内の学会では新しい術式のビデオの作成も含めて小児外科学会,手術手技研究会,などで発表の機会が与えられた.
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