研究概要 |
本研究は平成11年度科学研究費として基盤C一般,羊胎仔を用いた水腎症モデル作成と多嚢腎発生メカニズムの解明として3年計画で補助金の配分を受けた.現在までに胎生90日の閉塞性尿路障害では水腎症が作成され,羊の尿道と尿膜管の両者を同時に閉塞しなければ閉塞性尿路障害モデルは作成できないことを明らかにした.また胎生60日の早期の尿路閉塞では水腎症の所見はなく,病理学的に多嚢胞性異形成腎(多嚢腎)の所見を認めた.またこれらの嚢胞が集合管と遠位尿細管の拡張からなる多嚢腎と,近位尿細管の拡張からなる多嚢腎の2つのタイプが示された.免疫染色および電子顕微鏡でその部位は確認され,腎臓における多嚢胞の嚢胞の由来を明らかにした.さらに胎生50日の早期の尿路閉塞モデルは文献的に今まで報告がなかったが肺容量が正常コントロールの1/3で顔貌が特徴的なPotter症候群様羊が作成できた.この病理所見は腎重量がわずか2gのDysplastic kidneyで嚢胞の形成は認めなかった.これらの結果から,多嚢腎あるいは腎低形成は胎生期の尿路閉塞により,なんらかの圧力が腎臓に及ぶことで腎臓の発生が停止するためにおこることが推測された.今回は過去3年間に作成された腎臓の組織所見をPotter同様に3種類に分類した.尿路の閉塞時期による違いで大きな嚢胞を形成する多嚢腎、小さな嚢胞が形成されている多嚢腎、またもっとも早期の尿路閉塞による小さな萎縮腎の3タイプに分類した。これらは尿路の閉塞時期を変えたことによってできた変化で、発生段階の腎臓においては尿路閉塞による圧力が腎臓の発生を止めたことがわかった。この結果は第34回太平洋小児外科学会で発表の機会が与えられDifferent Phenotypes of Dysplastic Kidney in Obstructive Uropathy in Fetal Lambs.としてJournal of Pediatric Surgery, Vol36, No 11, 2001,に掲載された.
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