研究概要 |
【方法】NB摘出組織(ホルマリン固定パラフィン包埋材料)42例に抗Fas,FasL,pro-caspase3およびpro-caspase8抗体を用いた免疫組織染色を行った。一部の症例では,抗p17subunit抗体による活性型caspase3の組織内検出を行った。10例の腫瘍凍結材料を用いFas,FasL,pro-caspase3およびpro-caspase8ウエスタンブロットを施行し,さらに,18例の凍結材料を用いカスパーゼ9のウエスタンブロット解析も行った。また,Asp-Glu-Val-Asp(DEVD),Ile-Glu-Thr-Asp(IETD)基質を用いてcaspase3,-8様活性を各々測定した。【結果】大部分のNB(免疫染色:86%,ウエスタンブロット:100%)はFas発現を欠くか微弱発現に留まり,Fas陽性細胞の局在もアポトーシス部と一致しなかった。一方,FasL,pro-caspase3およびpro-caspase8は腫瘍の多く(免疫染色:70〜76%,ウエスタンブロット:50〜100%)で高発現し,また,pro-caspase3発現は予後良好群で有意に強かった。ウエスタンブロット法でpro-caspase3を強発現した腫瘍はDEVD水解活性も高値を示したが,pro-caspase8発現腫瘍の殆どはIETD水解活性を欠いていた。また,p17免疫染色により,活性型caspase3のアポトーシス細胞への局在が示された。さらに,ウエスタンブロット法では18例全例にpro-caspase9(p47)の発現がみられ,うち7例にactive caspase9と思われるp37/p35バンドが確認された。 【考案】NBはFasLを強発現するがFasを殆ど発現せず,また,Fasによるcaspase8活性化も欠いていた,従って,NBでは何らかの非Fas性シグナル-例えば,NGF枯渇あるいはBcl-2低発現-がcaspase9およびcaspase3の活性化を惹起し,これによりcaspase3-activated DNase(CAD)を初めとする種々の細胞内基質が分解されアポトーシスに至る,と推測された。
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