本研究は同種血管柄付き気管喉頭移植を人体に応用する前段階の動物実験として行っているものである。通常の方法による動物実験で気管喉頭移植を同所的かつ機能的に行うには小さくても犬以上の大きさの動物が必要である。我々は費用、動物愛護等の観点から気管喉頭移植を同所的かつ機能的に行いうる小動物モデルの開発にまず取りかかった。そしてこの2年間弱で実験動物モデルとしての双頭ラット作成法は完成し、またそのモデルとしての評価もほぼ終えつつある。すなわち、移植された頭部(ドナー頭部)は移植の際の虚血の影響は殆どなく脳機能にも問題がないことが証明された。このドナー頭部はレシピエントラットの生命に依存して生存しているので、ドナー頭部における移植実験から生じる気道閉塞や摂食障害などにより生命が脅かされることがないわけである。 さてこのモデルは単に我々が本来予定していた気管喉頭移植実験に用い得るだけでなく、これまで犬や豚などの大動物でしか行い難かった頭頚部の各種の実験をラットで行うことができるという点で意義があり、また脳死状態など脳の致死的なあるいは生命の維持に大きく関わる脳研究にも利用できるという点で画期的な動物モデルである事が判明した。このモデルに関しては学会発表(脳機能を温存した双頭ラットモデルの開発 第9回日本形成外科学会基礎学術集会2000.10.5-6名古屋)を行い現在投稿準備中である。
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