研究概要 |
我々は微小循環における血栓形成過程について実験を行ってきた。その結果、皮膚微小循環では細動脈では血小板血栓が見られるが、細静脈では白血球が血栓に関与していると考えられた。本年度はCD-18,抗L-selectin抗体を投与して白血球への影響を観察した。最後に家兎の糖尿病モデルを作成し、白血球の血管への影響も観察した。 家兎耳介遠位部にREC(rabbit ear chamber)を装着し、chamber内に完成した微小血管網で実験を行った。生体顕微鏡内に取り付けた水銀灯からの光を500-600nmの励起光に変換し、この励起光とfluororescein sodiumを作用させることで細動脈と細静脈に血栓を作成した。細動脈での血栓形成は血小板が主な成分になっていた。それに対して細静脈では白血球の血管壁への粘着がまず見られ、その上に血小板・赤血球と白血球が積み重なり血栓を形成していく像が観察され、細静脈での血栓形成および以後の組織障害に対する白血球の役割が強いことが示唆された。この動静脈での血栓形成の違いは血管壁の障害に対する反応の違いか、あるいは血流速度の違いによるものと考えられたが詳細は不明である。CD-18,抗L-selectin抗体で白血球の接着を抑制した実験では、白血球の関与が高い細静脈系で血栓形成時間が延長する傾向が見られている。アロキサンの投与で作成した家兎の糖尿病モデルでは細静脈に白血球の粘着が増加している像が観察された。またアセチルコリン、L-アルギニン、ニトロプルシッドの投与前後で血管茎を測定することにより、微小血管の血管内皮細胞由来の拡張機能障害が示唆された。
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