本年度はWistar系ラットを中心とした実験モデルの確立と各種条件の神経の端側縫合を行い、光顕的分析と筋電図学的な分析を行った。ラットの坐骨神経を採取し左右正中神経間で交叉神経移植を行うこととし、移植神経を右正中神経に端側縫合し、左正中神経には端々縫合を行った。その際、右正中神経の開窓法によって3群に分けた。第1群:側神経の開窓・神経線維部分切断群として右正中神経の神経周膜上膜に切開を加え開窓を行った。切開を神経横断面の1/5ほど切り込む様に入れ、神経線維が部分的に切断された状態とし、開窓部より切断された神経線維が膨隆し、はみだした状態となるようにした。以上の開窓操作後に端側縫合を行った。第2群:側神経の開窓・神経線維非切断群として右正中神経の神経周膜上膜に切開を加え開窓を行い、その際に、神経線維に極力損傷を加えない様に神経の長軸に沿って縦切開をおき神経上膜周膜を左右に展開し開窓を行った。神経線維が損傷されることなく開窓部に神経線維が露出した状態を作成した。第3群:側神経非開窓群として右正中神経の神経周膜上膜には切開を加えず開窓せずにそのまま端側縫合した。第4群として端側縫合は行わずに右正中神経の中枢側と左正中神経の末梢側にそれぞれ端々縫合の形で神経移植を行った。移植90日後に神経再生の評価を行った。その結果、誘発筋電図と光顕所見によって、すべてのグループすなわち第4群・第1群はもとより第2群・第3群において神経の再生が確認された。 また、すべての端側縫合モデルで再支配された左前腕の屈筋は移植神経刺激により収縮したが右正中神経が元来支配していた右前腕屈筋は収縮しなかった。そのため端側縫合において神経は再生されるものの、神経再生の際に縫合部において神経が側枝をだしている可能性は少なく、そのメカニズムについて今後解明を続けることとしている。 また、神経端側縫合を臨床に応用する前段階として、成犬の舌下神経を用いた端側モデルの検討をはじめた。
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