1、創傷治癒が遅延したモデルとしてdb/dbマウスを用い、切開創ならびに開放創を作成し、経時的に抗張力の測定と組織切片を作成した。db/dbマウスでは正常同系マウスに比較して有意に抗張力の低下、創の閉鎖の程度が傷害されることを確認した。創傷治癒遅延が神経伝達物質の減少によって生じている可能性があるため、中枢神経において神経伝達物質を介して神経管の連絡の増強作用があることが推定されている物質ピラセタムを経口投与し、創傷治癒の程度を検討した。その結果db/dbマウスにピラセタムを投与すると創傷治癒の傷害が軽減された。肉芽組織形成に関する現在末梢神経の染色、神経伝達物質の投与実験により創傷治癒と末梢神経の関係を明らかにする予定である。 2家兎耳介に創部の条件を以下のように変えてケロイドの動物モデルの作成を試みた。(1)軟骨を残し、フィルムドレッシングで被覆 (2)軟骨を残しフィルムドレッシングなし (3)軟骨を残し、周辺の表皮をバイポーラにて焼灼し、フィルムドレッシングで被覆 (4)軟骨を切除しフィルムドレッシングで被覆 (5)軟骨を切除し、周辺の表皮をバイポーラにて焼灼しフィルムドレッシングで被覆。 このように条件を変化させて創の盛り上がりを計測したところ、創周囲を電気メスにて焼灼したモデルでは、創傷治癒早期の活動性の高い組織が長期間にわたって得ることができた。創傷治癒初期の研究やさまざまな局所療法のモデルとすることは可能であると思われる。 3、血管拡張作用を持つ物質と肉芽内での血管新生の関係を探るため、トロンボキサンA2受容体拮抗剤の創傷治癒促進効果を実験モデルにて検討した。結果は開放創モデルでの創の上皮化、肉芽形成に関しては対象と差は認められず、この実験から判断すると皮弁の血流改善作用を持つ薬剤すべてが創傷治癒促進作用を持つわけではないことが明らかになった。
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