栄養血管を有する組織を再生するために、既存の血管を導入することを考え、AV shunt loopとAV bundleのどちらが有用かについて、両者の血管新生および組織新生のポテンシャルを比較する実験を行った(実験動物:ラット)。その結果、AV bundleにも旺盛な血管新生能、組織新生能が存在することを証明した。また、主静脈からの発芽型血管新生像も捉えることに成功した。 臨床的にAV bundleの方がAV shunt loopよりも扱いやすいことから、以後はウサギのAV bundleをvascular carrierとする実験系に移行した。まずAV bundleを、人工真皮を敷き詰めた穴あきchamber内に導入して、血管柄肉芽組織を再生した。この実険系でbFGF併用群は血管新生が豊富でより大きな肉芽組織が再生され、bFGFの有用性が示された。この再生肉芽組織に植皮を追加して、prefabricated engineering skin flapの作製ができ、血管吻合によって移植することも可能であった。また、臨床応用を目的としてさらに大きなchamberを作製し、より大きなtissue engineered skin flap (5cm×4cm)を開発することに成功するとともに、血管網の解明も行った。 再生肉芽組織のBarium血管造影、組織像、走査電顕所見から、chamber孔を通して形成されるのは毛細血管レベルまでで、導入血管束がchamber内の血管網の形成に主とした役割を果たしていることが明らかとなった。組織像、走査電顕像で導入血管の主静脈からの発芽型血管新生が捉えられたことは文献的にも稀である。 現在、DDS(ドラッグデリバリーシステム)とbFGFとを組み合わせ、肉芽組織再生におけるDDSの有用性とbFGFの至適濃度について実験中である。また、培養軟骨細胞を人工真皮にseedingして、耳型の穴あきchamberにいれ、ここにAV bundleを導入してtissue engineering auricular flapの実験も継続中である。組織工学、線維芽細胞増殖因子、動静脈血管束、血管柄付き皮弁、組織・器官再生
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