1)頭蓋顔面領域先天奇形に対し、drug induced modelを作成することにより、胎児手術についての検討をすべく予備実験を行った。 2)妊娠Wister系ラットを使用、薬剤は北村ら・磯谷らの報告を参考とし、妊娠後7・8・10・12・13日にvincristine0.25mg/kg、vinblastine0.25mg/kg、vitamineA150IU/kgを腹腔内注射で行った。妊娠21日の自然分娩を確認後、全新生仔を母獣より分離し、体重測定後、実体顕微鏡を用いて雌雄分類を行い、その外表を詳細に観察した後、10%formalin液にて固定した。固定を行った後、口角と外耳を結ぶ平面で断頭し、実体顕微鏡下に口蓋裂、その他外表奇形の有無の観察を行った。 3)妊娠7〜10日目、無顎症、口蓋裂が認められたが、口唇裂は全く認められなかった。vitamineA12日投与ラットにおいて小頭症(死産)(7.7%)、同13日ラットにおいて発育遅延(8.3%)がみられた。vincristine投与して発生した外表異常は妊娠8日投与ラット1雄胎仔に無顎症(7.6%)、1雌胎仔に外性器異常(7.6%)、妊娠10日投与ラット1雄胎仔に口蓋裂(9.1%)を認めた。妊娠8日vitamineA投与ラットで1雌胎仔に口蓋裂(9.1%)を認めた。vinblastine投与ラットに関しては全く異常胎仔は認められなかった。全群において体幹部奇形・四肢奇形・合指は生じてない。 4)本実験では催奇形胎仔を発生させるという予備実験としては、手技的にある程度の成果を得ることができたが、口蓋裂以外の頭蓋顔面奇形の研究は今だに少ないため、次回は、妊娠早期において複数の薬剤投与量を数種行い、薬剤毒性による死亡胎がより少なく、奇形発生率の高い口蓋裂以外の頭蓋顔面奇形のモデルを作成、微小形態的・組織学的検討を計画中である。
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