研究概要 |
1)本年度の実験計画は一昨年来の実験に引き続き、薬剤毒性による死亡胎がより少なく、奇形発生率の高い頭蓋顔面奇形を作成確立すること、薬剤誘発頭蓋顔面先天異常に対してアポトーシスの概念から口蓋板癒合部など異常発生無位における上皮細胞消失の現象を検討することの2点であった。 2)妊娠Wister系ラットを使用。妊娠後10日にvincristine 0.25mg/kg および0.4mg/kg、vitamineA 150IU/kg および200IU/kgを腹腔内注射で行い、妊娠20日の自然分娩以前の母獣をジエチルエーテル麻酔下に帝王切開して全胎仔を摘出して、体重測定後、実体顕微鏡を用いて雌雄分類・外表観察後、10%formalin液にて固定、断頭し、実体顕微鏡下に口蓋裂の有無の観察を行った。結果として、口蓋裂はvincristine 0.25mg/kg群で1例、vitamineA 150IU/kg群で2例発症し、vincristine 0.4mg/kg およびvitamineA 200 IU/kgでは口蓋裂は発症せず、死産が4例あった。その他、発育遅延、無顎症、小頭症がそれぞれ1例ずつみられ、体幹部奇形・四肢奇形・合指は生じなかった。 3)薬剤誘発モデルの作成が、上記のように十分得られなかったため、この中から口蓋裂例について、口蓋板接触以前と口蓋板癒合期にわけ、HE染色による形態学的観察、アポトーシス関連蛋白であるFas, Fas ligand を用いた免疫組織学的観察、さらにアポトーシス細胞のDNA切断の検出にはTUNEL法(TdT-mediated dUTP-biotin nick end labelling法)を用いてFITC標識の上、蛍光顕微鏡にて観察した。 4)薬剤誘発口蓋裂胎仔3例における組織観察において、口蓋裂上皮消失部位にて形態学的に細胞縮小、クロマチン濃縮、細胞縮小に伴う周囲細胞間の胞巣状の間隙、アポトーシス小体が観察された。酵素抗体法によるFas, Fas lgandの検索は染色の不備から行い得なかった。
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