研究概要 |
1)昨年まで、妊娠ラット各期に催奇物質であるvincristine, vitamine Aをそれぞれ単独腹腔内投与し、催奇形実験を行い、いくつかの先天異常を作成し得たことを報告した。本年度の実験計画として、奇形発現胎齢20日ラット頭部のアポトーシス誘導の異常を調査すべく、各群をHE染色とアポトーシス関連蛋白(Fas, Fas ligand)による免疫組織染色による観察、さらにアポトーシス細胞DNA切断の検出はTUNEL法による蛍光顕微鏡下観察を行った。 2)妊娠Wistar系ラットを用い、硫酸ビンクリスチンvincristine sulfate・vitamineAの濃度をそれぞれ0.25mg/kg、150IU/kgとして、妊娠7・8・10の各時期に腹腔内注射し、胎齢20日に出生直前帝王切開により全胎仔を加温生理食塩水中に摘出し、口蓋裂形成ラットを選び、10%formalin液にて固定した。固定後、口角と外耳を結ぶ平面で断頭し、48時間以内に通法に従ってパラフィン包埋し、前額断方向に5〜10μmの連続切片を作成し、hematoxylin-eosin染色(以下HE染色)を施し、さらに免疫組織染色を施した。一次抗体染色キットは抗ラットFas-L(N-20)ポリクロナルおよび抗マウスFas(M-20)ポリクロナル(Santa Cruz Bio.社)を用いて、希釈は1:500,1:100,:50とし、TUNEL法およびこれと相関性を示す抗single stranded DNA (ssDNA)(DAKO)での検討を行った。 3)vincristine, vitamine Aにより生じた胎齢20日口蓋裂ラットにおいて、異常発生部位付近のアポトーシス誘導の異常を調査すべく、Fas, Fas-Lの免疫染色性の変化、TUNEL陽生細胞の検索を行ったが、各群抗体希釈別のいずれにおいてもアポトーシス誘導の発現、局在を知ることはできず、口蓋裂完成期のラットにおいてはアポトーシス細胞のDNA切断時期が一瞬で、すでに完了しているため、組織形態学的にはプログラム細胞死が示唆されるも、陽性細胞の確認は出来得なかったと考えられた。
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