本研究では、セメント質と骨に特徴的な細胞外基質の遺伝子とタンパクの両方の発現を指標として、細胞と細胞外基質の発生分化の特性をセメント質と骨との間で比較検討することを目的とした。 平成11年度は、ラットのオステオネクチン、オステオポンチン、オステオカルシン及び骨シアロタンパク質に対する抗体を作製し、ラット胎児の下顎骨を材料とし骨基質の発生分化過程におけるこれらのタンパクの発現を免疫組織学的に検討した。その結果、これら4種類の細胞外基質タンパクは、胎児における骨の発生過程で、I型コラーゲンの土台の上にほぼ同時に蓄積し協調して骨基質の石灰化に関与する可能性が示された。この研究成果は学術雑誌に公表した(Anat Embryol[2000]202:31-37)。平成12年度は、ラット下顎骨の発生過程におけるこれらの細胞外基質の遺伝子発現について、それぞれの分子に対するRNAプローブを作製し、in situ hybridizationにより検討した。遺伝子発現はタンパクの発現に先行して認められ、各細胞外基質遺伝子の発現が骨芽細胞の分化と密接に関わっていることが明らかとなった。これらの研究の成果は学術雑誌(Histochem J)に既に受理され、近日中に公表予定である。一方、セメント質の発生分化に関しては、生後2週齢から6週齢のラット第一臼歯歯根を材料として、細胞外基質分子の遺伝子及びタンパクの発現を同様に免疫染色とin situ hybridizationを用いて検討した。その結果、それぞれの分子が骨、無細胞セメント質及び有細胞セメント質の三者の細胞と細胞外基質の発生分化過程で特異的な発現パターンを示すことが明らかとなった。この成果は新たに学術雑誌(Histochem J)に受理され、公表予定である。
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