研究概要 |
BMP-2は,TGFβファミリーに属する蛋白因子で,初期胚における腹側中枢葉誘導,骨芽細胞・軟骨芽細胞分化誘導,肢芽および歯胚における形態形成などにおいて重要な役割を果たしている。特に肢芽の指間領域においてBMPは,細胞増殖抑制とアポトーシスを誘導することによって肢芽形態形成の中心的役割を果たす。また,歯胚のエナメル結節においても,BMPによる増殖抑制とアポトーシス誘導が歯胚の形態形成のために重要であることが示唆されている。 我々は,このBMPによる増殖抑制とアポトーシス誘導機構をHS-72マウスB細胞株を用いて解析し,以下のような業績を上げてきた。 1.BMPは,p21^<CIP1/WAF1>の発現をmRNAレベルで増加させるが,G1サイクリン(サイクリンE,サイクリンD),サイクリン依存性キナーゼ(CDK2,CDK4)あるいは他のCDK阻害因子(p27^<KIP1>,p16^<INK4a>,p15^<INK4b>)の発現は変化させない。 2.BMP-2によるp21^<CIP1/WAF1>発現誘導は,CDK4に結合したp21^<CIP1/WAF1>レベルを増加させ,これに伴いCDK4による網膜芽細胞腫蛋白質(Rb)のリン酸化を抑制する。 3.BMP-2は,Rbを高リン酸化型から低リン酸化型に変え,これによって細胞周期G1期停止を誘導する。 4.抑制型Smad(Smad6,Smad7)の発現は,BMP-2によるSmad1/5C末端のSSXSモチーフのセリン残基リン酸化を阻害し,同時にp21^<CIP1/WAF1>mRNAの増加も抑制する。また,Smad1とSmad4の発現によってp21^<CIP1/WAF1>プロモーター活性が上昇する。 以上からBMP-2による増殖抑制は,Smad1/5の活性化を介して,これらがp21^<CIP1/WAF1>プロモーターに作用することによってp21^<CIP1/WAF1>の発現を誘導するためであると考えられる。現在さらに,BMP-2による増殖抑制とアポトーシス誘導にTAK1がどのように関っているかを解析中である。
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