臓器移植医療に継いで、次世代の先端医療として注目されているのが再生医療である。硬組織の再生、なかでも骨と歯の再生医療を実現させることは歯学部に託された使命と考えられる。そこで、我々は骨と歯の再生を目指して、歯髄や骨髄に存在する未分化幹細胞を骨芽細胞や象牙芽細胞に分化誘導させる研究を行なってきた。歯髄に関しては、不死化H-2K^b-tsA58マウス由来歯髄細胞がDSPP遺伝子を発現し、アルカリフォスファターゼ活性の上昇と燐酸カルシウムの形成を行なうことから象牙芽細胞様の硬組織形成細胞に分化すること、また同じ細胞がペレット培養により軟骨組織を形成することから、歯髄中に象牙芽細胞にも軟骨芽細胞にも分化可能な幹細胞が存在することを証明した。また、このような象牙質の誘導には脱灰象牙質が有効に作用することから、培養細胞が産生する細胞外マトリックスが細胞誘導に有効であると考えて、骨スライスやチタン上で骨芽細胞MC3T3-E1細胞を培養し、細胞外マトリックスの形成機構について研究を行なった。その結果、チタンと培養骨芽細胞の間に細胞外マトリックスが形成され、チタンの石灰化層に取り込まれることにより強固な結合構造が形成される事を明らかにし、アンカー構造と名付けた。また、この構造から細胞を剥離する技術をみいだし、細胞外マトリックス結合生体材料を開発することに成功した。現在この細胞外マトリックスを結合させたチタンプレートを用いて、骨髄幹細胞から骨芽細胞を誘導する研究を行なっている。また、今後、同様の方法を用いて象牙芽細胞、皮膚線維芽細胞と軟骨芽細胞の細胞外マトリックスを結合させたチタンプレートを開発することが可能なため、骨髄幹細胞を象牙芽細胞、皮膚線維芽細胞や軟骨芽細胞に分化誘導させる研究を行なう予定である。
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