研究概要 |
味蕾の神経生物学的特性と味覚情報の細胞内伝達機構を解明するため,ラット有郭乳頭の味蕾を用いて免疫組織化学的ならびに免疫電子顕微鏡的に研究をおこなった.受容体共役G蛋白質αサブユニットファミリーの中で,Gαs,Gαgust,Gαqの発現をそれぞれ組み合わせて二重免疫染色したところ,一部のGαgust陽性細胞のみがGαs陽性細胞と一致した.また一部のGαgust陽性細胞のみがGαq陽性細胞と一致した.GαsはcAMPを介した甘味の伝達に,GαgustはcAMPレベルを下げ,苦味と甘味の伝達に,GαqはIP3を介した苦味の伝達機構に関与すると考えられているが,Gαs,Gαgust,Gαq陽性細胞が二重染色によって一致しなかったことは,少なくとも数種類の味覚受容細胞の存在することが推測される. 味覚受容細胞は神経線維と求心性シナプスをもち,シナプスを介して味覚情報を中枢に伝達すると考えられている.そこで,これらGαs,Gαgust,Gαq陽性細胞がはたしてすべてシナプスを有しているかを検討した.シナプス小胞サイクル関連蛋白質の一つ,Munc-13-1に対する抗体を用いてGαs,Gαgust,Gαq陽性細胞とそれぞれ二重免疫染色した.その結果,Gαs,Gαgust,Gαq陽性細胞の一部がMunc-13-1陽性であった.このことは,受容細胞と考えられてきたGαs,Gαgust,Gαq陽性細胞が必ずしも味覚受容に機能的に関与してないと推測された.
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